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九鷲見亮介様インタビュー
masher」 ピックアップ投票 2005年上半期 第4位
Silveredsteel  http://silste.sakura.ne.jp/


作品の構想はどのように?
対象の女の子が堕ちて行く過程をじっくりと書いてみたかったのが始まりです。被害者の少女と加害者の男達との会話はほとんど無い予定でしたので、男視点の文章にしてしまうと少女の影が薄くなってしまうと思い、少女視点の文章にしてみました。構想としてはその程度の事しか考えておらず、見切り発車の制作開始でした。


シナリオメイキングはどのように?
結末は考えずに、ただ初日から順を追って書いていました。半分くらいまで書き終わった辺りで、やっと全体の骨格を決めた感じです。後日おまけとして出す事になった「masher Another(男の視点)」は、本編を書く時に同時に頭の中で進めてみていました。


キャラクターメイキングはどのように?
構想と同じくキャラクター設定も大して煮詰めないまま書き始めてしまいましたので、シナリオが進んでいく中でやっとキャラクターが出来た感じです。「masher」の初版ではそんな部分が顕著に出てしまい、初日から数日目辺りの主人公の台詞が後半に比べてやけに活発で、違和感のある物になってしまっていました。(現在公開中の物では書き直してあります)


以下について、こだわった点や苦労した点を教えてください
システム
システムはNScripterを使わせて頂きました。JAM工房さんが公開して下さっているTIPSが大変役に立ち、ほとんど苦労する事無く作れました。

シナリオ
Hシーンを書くのが一番苦労しました。シチュエーションや大まかな行動は違うのですが、生理的な反応や細部の行為は突き詰めればさほど違いが無いため、どうしてもHシーンでは文章が似通ってしまい、難しいと感じた点です。またこだわったと言う程では無いのですが、多少なりとも現実感が出せれば良いなと思い、電車内であまり無理な行為まではさせないようにしてみました。

キャラクター
主人公は、なるべく普通の子っぽく書いてみたいと思いました。どちらかと言えば脇役タイプの子ですね。

グラフィック
当時は制作手順も全く分からず、ペンタブレットの存在すら知らない状態でしたので、一番難儀した部分です。お絵かき講座のあるサイトさんを巡りながら、何とか形にしようとしていたのが懐かしいです。拙いながらも力を入れている部分は、キャラクターの表情です。

サウンド
フレーズのみならともかく、一曲ちゃんと作るとなると大変ですね。多分苦労はしたはずなのですが、出来上がった満足感が大きかった事の方が記憶に残っています。


好きなキャラ、気に入っているキャラは?
一番好きなのは千絵です。


没になったエピソードなどは?
トゥルーエンドの後、千絵と佐伯の二人の話に想像が膨らみましたが、これは没になりました。


思い入れのあるシーンや台詞は?
強いて挙げれば、中庭での唯と千絵の会話のシーンです。


企画時と完成時で変わったことは?
登場人物の性格が、若干変わりました。またシナリオの方、少しでも現実感があるようにと書いてみた結果、思った以上に鬱で暗い話になってしまいました。


ユーザーの反応で印象深かったことは?
プレイして下さった方により、気に入って頂けた部分が大きく違った事です。特にHシーンなのですが、同じ部分でも「そこだけは駄目だった」と言う方と、「そこが一番良かった」と言う方とがいらっしゃいました。もちろんある程度は予想していたのですが、自分で書いた物のご感想を頂いて初めて、人による性的な嗜好は想像以上に細かい物で、大きな個人差がある事を実感しました。


製作期間は?
約一ヶ月です。


製作中のトラブル・失敗談は?
一般的な事になりますが、バックアップに関してです。当時はまだ作業中のファイルをバックアップする癖は無かったため、誤って上書き保存してしまったり、途中でお絵かきソフトが落ちてしまったりで、切なくなる事もしばしばありました。


製作を終えて、心残り・反省点は?
挙げ始めればきりが無いのですが、キャラクターの名前が後悔している点の一つです。「唯」と「千絵」の両名の名前、これは無意識のうちに頭の中に残っていたのか某漫画のヒロイン二名と同じになってしまいました。


ゲーム製作歴は?
「masher」を制作したのが初めてで、シナリオ、絵、スクリプトもこの時から始めました。音楽は以前からやっており短いフレーズを作った事はあったのですが、一曲ちゃんと作ったのはこちらもこの時が初めてです。


初めて作ったゲームは?
上記の通り「masher」が初めてです。ただ、小学校の頃に双六のような物を自作してクラスの友達と遊んだ事はあり、広義の意味ではこれが最初になるかもしれません。


ゲーム製作を始めたきっかけ・理由は?
ゲームは好きでしたし、潜在的にいつか自分も作ってみたいと言う想いがあったのだと思います。ゲームプレイ中に「ここがこうなっていれば良いのにな」と感じる所は誰しもあると思いますが、それが制作の一番の動機です。

実際にゲームを作ってみるきっかけは、TYPE-MOONさんの「月姫」でNScripterの存在を知ったのと、それを丁寧に解説して下さっているサイトさん(前述のJAM工房さん)があった事です。他にも、当時たまたまスキャナーを手に入れたという事や、自分で作った曲をどんな形でも世に出してみたかった事など、細かい理由が幾つかあって突発的に製作に走りました。当時は本当に右も左も解らない初心者だったのですが、思い切って始めてみて良かったなとしみじみ感じています。


ゲーム製作時に心がけていることは?
「masher」制作時は色々と考える暇もなかったので、現段階での、主にシナリオに関しての話になります。
心がけているというか作りたい物の理想ですが、スティーヴンキング氏の小説に対する評で「あり得ない事だけど、いかにも起こりうるような説得力のある文章」というような物があったのですが、そんな感じの物が書けるようになれば良いなと思っています。細かい部分の描写の真実味、「大きな嘘をつく時に、細部に真実を混ぜる」(これもどこかの漫画の一文だったと思います)といった感じですね。

あとは意外と難しいのですが、自分の作りたいと思っている物を無意識のうちにでも無難な方向へと曲げてしまわないようにしたいとは思っています。「masher」の制作時はもちろんサイトも開設しておりませんでしたし、良くも悪くも一方向だけを向いて作れました。ですが今ではどうしても頂いたご感想が頭をよぎり、「あ、ここは一般的にきつすぎるかな?」とか、「こうして欲しいって言う意見もあったよな……」と思ってしまい、下手すると最大公約数的な方向に向かってしまいそうになります。頂いたご意見は上手く自分の中に取り入れて、且つ、自分の色を失わないようにしたいですね。上の「ユーザーの反応で〜」の所で書いたように、万人に納得して貰えるような物を作るのは本当に難しいと思いますし、それならばせめて、10人にプレイして頂いて全ての方にそこそこの及第点を貰える物よりも、9人の方に受け入れられずとも1人の方に思いっきり気に入って頂けるような物(肌に合わなかった方には本当に申し訳ないのですが)が出来れば良いなと思っています。


楽しい作業と苦手な作業は?
一番面白いと感じるのは、実はスクリプトです。事務的な作業は結構好きで、一個ずつちゃんと積み上げていけば正確に動作するのが何だか嬉しいです。

絵を描くのは、何度修正しても思ったように描けない時もありますが、ある程度は予想通りの制作時間で出来ますし、好きな音楽を流しながら出来るので楽しいです。

一番苦手なのは、シナリオを書く事とその校正です。嫌いと言う意味では無いのですが、変な部分で悩みすぎてしまうためか異常に筆が遅くて……。また絵やスクリプトの時と違って、聴きたく無い時でも使用予定の曲(または場面にあった曲)を流していないと上手く書けないという事も理由です。

どのパートにしても、まれに思いっきり制作に没頭出来る時があるのですが、やっぱりその時が一番充実して楽しいですね。


次回作「Lash&Knot」(シェア)について教えてください
「masher」、「Bad Name」の続編になります。長くなってしまった話に一応の結末をつける予定です。今のところルート(エンド)は4つ程考えておりますが、もしかすれば思い切って一つのルートに絞ってみるかもしれません。販売形態に関しては、「Bad Name」のようなパッチ追加型にするか、一話ずつ単体で動作する物にするか思案中です。


「Bad Name」(シェア)のフリー化はいつごろ?
製作前より「いつかはフリーにしたい」と述べてきたのですが、現在では無期延期、と言うか白紙の状態になってしまっています。幾つか理由はあるのですが、18禁の作品をフリーで公開し続ける事の重さが少々負担になってしまっているのも原因の一つです。「Bad Name」は「masher」よりも遥かに18禁度が高く、また内容的に問題のある部分もありますので……。それでも、より多くの方に見て貰いたいと言う思いは今もあります。例えば、18passのような共通化されたオンライン年齢認証システムが個人サイトでも気軽に導入出来るようになれば、再考してみたいと思います。


シェア作品のフリー化、フリーとシェアの違いについて、どのようにお考えですか?
これに関しましては悩んでいる事でもあり、関連の話も省略しがたく長くなってしまうので、他サイト様のページ上でお答えするのは大変気が引けるのですが、よろしければ以前自サイトで掲載した物の要約も含めて記載させて頂きます。

一度販売していた物をフリーにするのは、やはり一点、難しい問題がありますね。「masher」は、もともとDLsite様で販売していた物をフリーにした物です。これを予告も無しに唐突にフリーにしてしまった事は、当時お金を出して買って下さった方に対して本当に申し訳なく思っており、今でも思い出す度に心苦しくなります。

じゃあ何故うちでは「masher」をフリー化したのか、「Bad Name」もフリー化の予定があったのかと言うのは、長くなりますが以下のような理由によります。
まず「masher」ですが、今見ればどうしようもなくヘタレなCGであるとは言え、決して手を抜いて作った訳では無く当時の最大限の能力を込めた物でした。この程度でも当時の自分は完成出来た事に満足していましたし、それを販売する事に何の抵抗もありませんでした。ところが絵を描き続けるほどに粗が見えてきてしまい、半年後にはあの絵で1円でもお金を頂く事がどうにも耐えられなくなってしまいました。売り上げが一本カウントされれば、嬉しいのももちろんあるのですが、同時にやり切れない思いが込み上げてくる感じです。それ故一回の値下げを経た後に、フリーソフトと言う形での公開にしてしまいました。

「Bad Name」の序盤の方もまだまだ極めてレベルが低かったため、いずれ同じ様に販売する事が耐えられなくなるのでは無いかとの危惧がありました。2002年7月22日から分割版2ndパッチの販売を開始したのですが、決して「2ndパッチ販売開始当時の自分」がこれを販売する事に対して寸分でも苦痛を感じた訳ではありません。ただ、その時点での僕が「恐らく今から数年後の自分が、「masher」の時と同じく納得出来なくなるのではないか」と思ってしまった訳です。実際今2ndパッチ辺りを見ると、不満のある所が極めて多くあります。何年か後に「masher」と同様にフリーソフトとして配布する可能性が高かったため、発売以前より「フリーソフトとして公開する予定があります」と表記していました。宣言したからと言っても全ての方がサイトに記載されている文を隅々まで読む訳ではありませんし、結局は「masehr」の時と同じ事になってしまうかもしれないのですが、せめてお買い上げ頂くかフリー公開されるまで待って頂くかの選択をして頂ける状態にしておきたかったと言う、個人的な言い訳のような物ですね。(現在ではこの問題に対する悩みもあってフリー化は白紙に戻ってしまっているため、記載はしておりません)

関連して、うちがメインにしているダウンロード販売の話です。
ダウンロード販売は、パッケージ版と違い在庫切れが無く半永久的に販売が可能です。

また例えば多数流通している市販ゲームのように、その需要によって徐々に価格が変動(主に下降ですよね)していくような事もありません。従って上記のように、もし販売している物が「どうしても過去に設定した金額を頂くのが苦痛」になったような場合には、以下の様な選択肢を選ぶ事になるかと思います。

 1.「そのままの値段で販売を続ける」
 2.「販売停止してお蔵入り」
 3.「一旦販売停止、別の形(値下げ、他作品に同梱してセット販売、無料配布等々)での公開」

うちの場合、一番のそのまま販売を続けるというのは、先に記載した通り苦痛を感じてしまい無理でした。二番目についてですが、さんざん「ヘタレなCGのmasher」と自分でも言っていますが、作った物に対する愛着はあります。うちの作品は陵辱物の上に鬱な話で嫌悪感のある方も相当いらっしゃるかと思いますが、それでも、例えわずかな割合でも作品を気に入って下さる方はいるようで、それが本当に嬉しいです。この部分は本当に作者のエゴになってしまうのですが、ソフトを公開停止にして忘れ去られてしまう事もまた非常に辛い物で、公開を一切停止してしまえば道義的に問題無いとは解っていても三番目を選んでしまいました。

三番目の内、販売していた物のフリー化と言う事では、アリスソフトさんが行っているように(これはパッケージ版ですが)、販売終了してから長い年月が経ち市場で手に入れる事が極めて難しくなった古い作品であるなら、以前にご購入頂いた方にも納得して頂けるのかなとは思います。ダウンロード販売している物も、一旦停止の後、それなり年月を経てからのフリー公開であればまだ良いのかなと思います。すぐにでもフリーで公開出来る場合であれば、その自分の旬に近い作品をなるべく早く公開してしまいたい気はあるとは思いますが、難しい物ですね。

アマチュアゲームで特にダウンロード販売をしている場合などには、いずれは自らの手で「古い物」になった作品の行く末を決める事になると思います。上に書いたように個人的にはフリーにしてでもその作品を公開し続けたいですし、未プレイの遊ぶ側の立場としては出来れば何らかの形で公開して頂けると嬉しいのですが、多くの方が行っていらっしゃるように潔く販売停止するのも正解なのかなとも思います。

論点がずれてしまっているような、非常に回りくどい文になってしまいましたが、この事に関しましては自分でもまだ迷っています。
フリーの物と販売物の違いについては、ありきたりな回答になってしまうのですが、本質的な所ではその公開形式だけの違いだけだと思っています。


masherのシリーズ完結後の予定は?
大まかな構想を練っている話は幾つかあるのですが、どれから手を付けるかは未定です。


今後作ってみたいゲームのテーマやジャンルは?
やはりノベルですね。一般向けの作品も作ってみたいですが、やはりうちの場合はHシーンに期待されている方もいらっしゃると思いますので、今まで通り男性向け(いわゆるその手の目的用)がメインになるかと思います。そのうち、ゲーム性の有る物も作りたいとは思っています。


好きなアマチュアゲームは?
最近はめっきりプレイする機会が減ってしまったのですが、パソコンを始めた頃は多くのフリーゲームを本当に楽しませて頂きました。恐縮ながら名前を覚えていない物も多いのですが、その頃夜通しプレイした作品達の内容は今でも心に残っています。ちなみに一番プレイ時間が長いのは、ほしけんのWeb頁。さんの「ヘボリス」で、今でもついついプレイしてしまいます。


好きな商業ゲームは?
沢山あるのですが、一本だけ挙げるとすれば「久遠の絆」です。全く事前の情報無しにパッケージに惹かれて購入した事もあって、その内容が非常に強く印象に残っております。思わずサウンドトラックやアンソロジーまで買い集めてしまったのはこれが最初です。


影響を受けた作品は?
ゲームでは無いのですが、根本的な部分で影響を受けた物は幼少の頃に読んだ絵本「チロヌップのきつね」かなと思います。
また「弟切草」では、内容もさることながら、小説や映画とはまた違ったサウンドノベルというストーリーの表現方法に非常に感銘を受けました。
あとはアリスソフトさんの「蒼海に堕ちて…」が、選択肢が無く一本道の短い話でも良い物は良いんだと思わせてくれた作品です。


ユーザーにメッセージを
「masher」をプレイして下さり、本当にありがとうございました。また、投票して下さった方及びご意見を投稿して下さった方に心より感謝致します。

率直なご感想は、賛否いずれであろうとも大変ためになり嬉しく思います。今後ものんびりでも長く制作を続けて行きたいと思っておりますので、気長に見守って頂ければ幸いです。


  (2005年7月17日)