- フリーゲームレビュー:女性向 -  │HOME乙女(1)


育成日記

若くして天才研究員の月星小夜(名前変更可)は、人間より優れた人工生命体を創る研究に携わっていた。長年の研究が実を結び、類い稀なる才能を持って生まれた人工生命体の少年ミライ(名前変更可)。小夜は同じチームの研究者たちから強制的にミライの世話を押し付けられてしまう。幼い頃から研究所で育ち、親の愛を知らない小夜は、子供を育てることに不安を覚えるのだが……。



【表】育成日記

人工生命体の少年を育てる育成シミュレーション。「勉強」「運動」「容姿」「創作」「娯楽」の五つのコマンドを実行してミライの能力を上げていきましょう。ミライの能力や親密度などによって、16個のエンディングへ分岐します。

期間は一ヶ月。週の初めに一週間の育成スケジュールを決め、四ターンでエンディングへ。一週間の育成日が月〜金の五日間、育成コマンドが五種類ですので、全てのパラメータをまんべんなく上げようと思えば、単純に育成コマンドを一つずつ割り振れば良いわけですね。その方法で大抵のエンディングを見ることは出来ますが、特定のイベントやエンディングを見ようと思えば、若干の工夫が必要です。煩わしくないシンプルな育成でありながら、簡単すぎるわけでもない。短時間で気軽にプレイできる育成ゲームとして、ちょうど良いバランスでした。

人工生命体のミライは、生まれた時からずっと、ただ一途に小夜のことを慕っています。わずか一ヶ月で幼年から少年へ、少年から青年へと成長し、小夜に対する思慕も別のものへと変わっていきます。年頃になるとファッション雑誌を見て髪をセットしてみたりして、健気に努力しているのがいじらしい。小夜に一人の男として見てもらえるように頑張るミライが可愛らしく、つい応援したくなります。

一方、小夜は幼い頃から研究一筋の堅物研究員。男言葉で無愛想で、身なりにも構わず、恋にも無縁。ミライの思慕や同僚の雨森青年のアプローチにも全く気付かない徹底した堅物っぷり。特殊な境遇ゆえに情緒未発達な彼女が、きちんとミライを育てることができるか否かはプレイヤーの導き次第です。小夜がミライに愛情を持って接すれば、ミライは健やかに育ち、無関心に接すれば、屈折して育つでしょう。ミライの純粋な思慕を冷たく切り捨てる「氷の心」シナリオは、見ていて辛い。

小夜がミライの心を踏みにじり続け、ある条件を満たすと、最終日に「想いの爆発」イベントが発生します。個人的には、これに萌えまくり。うむむむむミライめ、せっかく監視カメラの死角まで小夜を連れ込んでおいて、やることはそれだけか? そこまでやったなら、最後までやれい! ……と欲求不満に悶える私のことはさておき、このイベントはミライの能力によって五種類の会話パターンへ分岐しており、何気に細かく作られています。どの能力バージョンの会話も、萌えるやら切ないやら。ただ一途に小夜の愛情を求め、求めても得られずに絶望するミライの姿が哀しい。このあたりのシナリオは、もっと作り込んでほしかった気がしますね。いろいろなドラマが生まれそうな闇ルートなのに、単にミライがひねくれて闇エンドへ行くだけでは味気ない。

すっきりした綺麗なデザインと使いやすいインターフェースで、システムは良好。育成部分と既読イベントをまとめてスキップして、育成結果だけを表示することも可能です。おかげで同じ場面を何度も見る必要は無く、サクサク進行できました。通常の育成コマンドに加えて「全勉強」「全運動」「全容姿」「全創作」「全娯楽」コマンドも用意されており、一週間の育成スケジュールを全て同じコマンドで埋めることもできます。一つのパラメータを集中して手っ取り早く上げたい時に便利。二周目以降は選択肢を挟んでスキップを続行できる機能も用意されており、至れり尽くせりでした。育成シミュレーションは同じ作業を何度も繰り返すゲームなので、スムーズな操作性は大いに重要です。本作はそのことをきちんと考慮されており、無駄な手間を減らして快適にプレイできるよう工夫されていました。

欲を言えば、エンディング回想とイベント回想、もしくはセーブのコメント機能があれば嬉しかったでしょうか。好きなイベントをいつでも見れるようにセーブで保存しておいても、どれがどのデータか判らなくなって困ったもので。


【裏】育成日記

さて、実は小夜やミライや雨森よりも強烈な存在感を発する人物たちがいます。それは小夜と同じ研究チームのじじい五人衆。この作品、恐ろしいことに登場人物の半数以上がじじいだったりします。

本編でも微妙に良い味を出しているじじいどもですが、そんな彼らのことが気になるあなたは「裏育成日記」へGO! 本編で全てのエンディングを見ると、じじいメインの「裏育成日記」をプレイすることができます。

冷たく厳しいチームリーダーの出雲(ツンデレ)、飄々として胡散臭い霧生、ガテン系で大雑把な雷門、いつも笑顔で掴みどころのない空中、女ったらしのアドルフ。いずれも一筋縄ではいかない変人じじいどもですが、歩み寄ってみれば新たな一面が見えるかも……?

業界初・じじい攻略乙女ゲー。どのじじいも可愛くて萌える。60歳以上は守備範囲外なあなたも、裏育成日記をコンプリートする頃にはじじい萌えになっているはず。表の育成と裏のじじいで二度美味しい作品でした。

(2006年4月18日)


【プレイ時間】20分 【総プレイ時間】3〜4時間 【容量】12.2MB 【ツール】吉里吉里2/KAG3 【備考】製作サイトに攻略あり 【参考1】ayako様インタビュー 【参考2】ピックアップ投票結果

【HP】「Water colors -games-」 http://watercolors.sakura.ne.jp/games/