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高校一年生の三神蛍は陸上部の万年補欠。大会の選手には選ばれず、憧れていた先輩には振られ、無気力な日々を過ごしていた。そんなある日、蛍は三人の男子生徒から告白される。
乙女ゲームの皮をかぶった学園サスペンスノベル。蛍は同じ日に、なんと三人の男子生徒から告白されます。宇宙からの電波を受信する年上の同級生「霧島五代」、ロッカーに立て篭もる虐められっ子「木下隼人」、寡黙なクラスメイト「江藤志郎」。彼らと接しながら五日間を過ごし、選んできた選択肢によって三種類のエンディングへ分岐します。蛍に告白した男子三人のうち二人との恋愛エンディングがあり、ここまではとりあえず乙女ゲームのセオリー通りでしょうか。
蛍の友人のナツメは女子陸上部のエースで、蛍の憧れの結城先輩と付き合っている女の子。蛍は彼女への劣等感に苛まれています。どんなに頑張ってもナツメに勝てないことに絶望し、走ることを止め、クラスメイトたちを遠ざけ、無気力な日々を過ごしている蛍。他人への妬み、僻み。こうした負の感情をストレートに表している主人公はめずらしく、人間味があって新鮮でした。アクが強いので人によって好き嫌いは分かれそうですが、個人的には「とにかく明るくて元気」などの記号的な主人公よりも魅力的に思えます。
告白され、恋愛エンディングを迎えて終わりかと思いきや、どっこいまだ終わりません。全てのエンディングを見ると「RE
START」として一ヵ月後のシナリオが現れ、隠されていた真相が明らかになります。“彼”と付き合い始めてから、よく笑うようになった蛍。彼氏とデートをしたり、友達と遊んだり、そんな風に楽しく過ごせるようになったある日、同級生から受けた忠告。「先輩に気をつけろ」と……。こちらの本編は六日間。終盤の選択肢によって二つのエンディングへ分岐し、本当の結末を迎えます。
三人の男子生徒から同時に告白されるなどということは現実では有り得ないことですが、乙女ゲームの世界では大してめずらしくもありません。故に、よくあるご都合主義の主人公モテモテゲームね、と舐めてかかってプレイしたわけですが、結果として見事に裏切られました。全編を通して恋愛要素は薄く、どちらかというと男性陣よりも主人公の蛍の言動に目が釘付け。前半はとんがりまくって何をしでかすか分からない危なっかしさ、後半は一本芯の通った漢らしさ。いいですね、拳で語り合う女の友情……って、これは一体何のゲームでしょうか。
本作は「乙女ゲーム」を名乗りながら、その実、従来の乙女ゲームの枠から堂々と外れた結末を見せてくれました。この程度のどんでん返しで、ここまで新鮮さを感じてしまうということは、裏を返せば、従来の乙女ゲームがとことん型に嵌っている証でもありますね。そんな停滞したジャンルの中、このように一歩ハズした作品が現れるようになったのは嬉しいことです。本作は、乙女ゲームのお約束を上手く逆手に取った作品と言えるでしょう。男性でも楽しめるのではないでしょうか。
(2004年12月19日)