- フリーゲームレビュー:女性向 -  │HOME少女(1)


さくっとパンダ

出版社に勤める高橋は、同僚のマケルに頼まれ、ある女性と会う。彼女が高橋に手渡したものは、一枚のディスク。その中身は、 五年前に藤宮高校とスーパー「コゴマ」で起きた惨殺事件の真相を書いた実記だった。彼は読み始める。明かされなかった裏の物語を……。




第一部 「苦痛」

藤宮高校三年生の小倉こたつは、クラスで「いじめ」の対象になっていた。主犯の尾藤あゆりにハメられて留年になったこたつは、彼らに復讐するために母の知人の男のもとで修行をすることに……。

変わるよ。私。変わってみせるよ。

全四部作の第一部。アホっぽいタイトルとは裏腹に、ハードでエグい物語です。序盤からいきなり男子トイレで男五人に輪姦されそうになるヒロインというのは、いかがなものでしょうか。何より場所が最悪ですね。男子トイレの汚い床に押さえつけられてトイレットペーパーを口に突っ込まれるのが嫌すぎる。ギャグとシリアスがごちゃ混ぜですが、基本的には陰鬱なストーリーです。後半に猟奇事件が発生して急展開。テキストの文法が滅茶苦茶で、日本語が派手に崩壊していて参った。ストーリーも突っ込みどころは多々ありますが、それでも力技で読ませてしまう勢いとパワーがありました。第一部→第二部→第三部と回を追うごとにエグさが増していきますので、第一部はまだまだ序の口です。

(2006年7月12日)


第二部 「妄想断末魔」

藤宮高校猟奇殺人事件から一週間。藤宮高校は閉校になり、こたつは師匠のもとで修行しながらフリースクールへ通うことになった。新しい学校で出来た新しい友人たち。穏やかな美少年のコゼット、熱血で情に厚い三毛猫、愛らしい真穂とクールな花穂。信頼できる仲間を得て、楽しい日々を過ごすこたつだったが……。

大丈夫。私はそう心の中で呟いた。きっとうまくいく。きっと強くなれる。だって皆がいるから。だって皆が私を支えてくれたから。

全四部作の第二部。前半のヌルい学校生活には少々退屈しましたが、そのぶん後半との落差を楽しめました。相変わらず性的にも精神的にも可哀相な目に遭いまくりのこたつには同情します。人間の醜悪さを、ここまで執拗に嫌らしく汚らしく書けるのは、一種の才能かもしれない。蛆虫のような人間性の釜谷を、「モデルは私です」と言ってのける作者さんの漢気に感動した(笑) 第二部もなかなか衝撃的な展開でしたが、それは第三部の前座にすぎないのであった。

(2006年7月24日)


第三部 「妄想交響曲」

フリースクールが閉校になり、皆と別れて一年。中華料理店でバイト生活を送るこたつの元へ、花穂からの手紙が届く。「キデンリュウに狙われている。至急来て欲しい」という内容だった。キデンリュウは師匠や三毛たちが所属していた謎の組織。師匠は、キデンリュウは解散したと言うが……。

恋をした。大好きな人と、結ばれた。ゆっくりと歩く冬の道。寒くてかじかむ手が一瞬で暖かく感じる。あ、私、今すごく幸せを感じてるんだ。

全四部作の第三部。今までのシナリオをひっくり返す超エグい展開あり。よくもまあ、ここまでえげつないものを書けますね。なぜか年齢制限されていないようですが、これほどグロい性表現と残酷表現があって、全年齢というのはちょっと。うっかり小学生女児がプレイしたら、トラウマになりそうです。というか、成人した身でもキツい。これは18推あたりが妥当では。本編を最後まで読むと、本編の過去にあたる「aoi」シナリオが開きます。ある女性の短く不幸な生涯。それが全ての始まり。

(2006年9月15日)


第四部 「鬼蛇」

出版社に勤める高橋は、同僚のマケルに頼まれ、ある女性と会う。彼女が高橋に手渡したものは、一枚のディスク。その中身は、 五年前に藤宮高校とスーパー「コゴマ」で起きた惨殺事件の真相を書いた実記だった。彼は読み始める。明かされなかった裏の物語を……。

絶対生きてやる。絶対負けない。最後まで、しぶとく生きてやるんだ。

全四部作の最終部。マリア、麻呂部、白龍、シャオ、真穂、三毛、コゼット、九龍のシナリオが一人ずつ順番に開いてゆき、それぞれの視点から彼らの過去が明かされます。誰のシナリオも漏れなく鬱満載。あちこちで思わぬ人物と人物が繋がっていて驚きました。八人の過去編の後、主人公の目覚めによって最後のシナリオへ。

九龍が最後に[こたつを庇って死ぬ]のは、まあ、お約束。結局はこういうありきたりなクライマックスになるわけだ、と若干冷めましたが、電車内のラストシーンは綺麗な演出でしたね。ああいう締めで来るとは。なるほど。あれこれぶっ飛んでいたわりには、まともに(無難に)まとまっています。クリア後のおまけシナリオで黒幕の正体が判明しますが、名前を見ても「誰だっけ」と思うこと必至。せめて立ち絵があれば、覚えていただろうに。

タイトル画面の最後の仕掛けは、第三部の時点でやれば効果的だったかもしれませんが、最終部でやってもあまり意味が無いのでは。せっかく本編でこたつが九龍の件を乗り越えて強く生きていこうと前向きな終わり方をしているのに、その後に後ろ向きな[九龍塗りつぶし=否定・逃避]。退化してどうする。作者さんが何をしたかったのか、よく解りません。

第一部〜最終部のプレイ時間を全て合わせると、約25時間。ボリュームはフリーノベルの中で一番でしょう。これだけの長編をまとめあげ、きちんと完結させたのは大したものです。滅茶苦茶な日本語と、粗だらけのシナリオ。それでも、諸々の欠点を力技で押さえ込んで、ぐいぐい最後まで読ませてしまう作品でした。とにかく、勢いとパワーは充分すぎるほど有った。こういう作品を楽しめるのも、フリーゲームの醍醐味でしょうね。

〜余談〜
(1)テストプレイヤーが18人もいたわりには、ずいぶん誤字脱字が多かったですね。18人いても拾いきれないほど大量だったのか?
(2)最終部の予告ムービーにあったこたつのウェディングドレス姿は、結局何だったのか。

(2007年3月25日)


【ジャンル】バイオレンス伝奇ノベル 【プレイ時間】第一部:3時間、第二部:6時間、第三部:7時間、第四部:9時間 【ツール】NScripter 【参考】ピックアップ投票結果

【HP】「禁飼育」 http://agony.sakura.ne.jp/