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真っ暗な場所で目覚めた「僕」は、記憶を失っていた。暗闇の中を這いずり回っていると、姿の見えない「そいつ」に出会う。あのとき僕が見たことを全て「君」に伝えておくよ。手遅れになる前に。
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パズル的な構成のノベルゲーム。記憶を失った「僕」が暗闇の中で「そいつ」に出会った時のことを「君」に語る……というストーリーですが、選択肢によって「僕」「そいつ」「君」のキャストがガラリと変わります。一回のプレイ時間は短く、ひとつのエピソードにつき3分程度。最初は状況も人物関係もサッパリ解りませんが、何回もプレイして断片的なエピソードを重ねるうちに、やがて一つの物語が見えてくる仕組みになっています。
全てのエピソードで共通するのは、暗闇。そして「僕」「そいつ」「君」の存在。「僕」は、いつ、どこで「そいつ」と会って、何をしたのか。その時の話を、いつ、どこで「君」に語っているのか。限定された要素の中で様々なエピソードが描かれ、それらが全て矛盾することなく繋がっており、非常に練られた構成です。(一部こじつけっぽいものもありますが、まあ気にしない)
ひとつのエピソードをクリアすると、エンディングリストにそのエピソードが追加され、エピソードの概要とキャストを確認できます。エンディングリストでは各エピソードが時間軸に沿って順番に並び、プレイを重ねる毎に様々な情報が書き込まれていきますので、全体の物語を理解する上では欠かせません。エピソードをひとつクリアする毎に、エンディングリストを確認されることをお薦めします。
最初は断片的な情報ばかりで戸惑うかもしれませんが、プレイを重ねるうちに、「あのエピソードのあれは、こういうことかも」などと少しずつ解っていきます。「彼と彼は友人で、彼は彼女を好きで……あれ、これは数年後?」などなど、各エピソードのキャストと情報を照らし合わせながら、手探りで考えていくのが面白い。それらの過程をすっ飛ばして、何も考えずに最後までボーッと読んで、「わけがわからない」「つまらない」と切って捨ててしまうのは勿体無いことだと思います。
何も見えない真っ暗な闇の中で、ぼんやりと浮かび上がる赤い光。すぐ近くに感じる「そいつ」の気配。自分が誰かすらも判らない状態で、得体の知れない恐怖と緊張感がありました。「僕」が「そいつ」や「君」に殺されてしまうエピソードなどもあり、油断は出来ません。不気味な恐怖を描いたホラーでもあるし、少しずつ情報を読み解いていくミステリーでもある。SF的なトンデモ要素もあったりするし、実のところは彼と彼女のラブストーリーだったりする。様々な要素のある作品です。
全てのエピソードを読み終えると、エンディングリストのどこかから人物紹介を見ることができます。それぞれの人物による物語のあらましが書かれていますので、これを読めば、各エピソードだけでは解りにくかった謎も全て解けるでしょう。
エンディングリストには他にもいろいろな資料が隠されており、隅から隅まで楽しめます。
さて、改めて全体の物語を見てみると、SFというか荒唐無稽というか、実は結構すごかったりします。なので余計に「なんじゃこりゃ」と思う人もいるかもしれません。しかし、本作はストーリーを楽しむゲームではなく、パズル的な構造を楽しむゲームですので、これはこれでアリかと思います。大切なのは暗闇の中の「僕」「そいつ」「君」のエピソードを矛盾なく成立させ、一つの物語に繋げることであり、その課題は充分に達成されていると考えます。
構成もストーリーもかなり独特ですので、人によって好き嫌いが分かれるでしょう。合わない人にはとことん合わないかもしれません。しかし、このような実験的な試みの作品が生まれるのも、フリーゲームならではの魅力です。ノベルでありながら、パズル的な複雑な構造を持つ本作。今までにない新鮮な感覚で楽しくプレイできました。
(2006年3月3日)