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White Epilogue

城崎朝陽と日乃葵は新聞部に所属する幼馴染の恋人同士。隣町で連続失踪事件が起きているという都市伝説に葵が興味を持ち、次の新聞記事で取り上げることになった。二人で隣町の過去の事件について調べるうち、実際に近年で数件の失踪事件があったことを知る。調査を進めながら、朝陽は言い知れぬ不安を覚えるが……。



意外な真相が待ち受ける学園サスペンス純愛ノベル。「本編 - main story -」「明かされる真実 - aoi side -」「白い結末 - white epilogue -」「その後 - the rising sun -」の四章構成。

第一章では都市伝説の調査と共に、朝陽の穏やかな日常が描かれます。しっかり者で甲斐甲斐しい恋人の葵、おっとりした新聞部部長の未来、未来の幼い妹のサナ、いつも眠そうな親友の健一。彼らとの楽しい日々が続く中、時折『傍観者』の独白が挿入されます。 「穏やかな日々は続かない」「私は結末が悲しいものであることを知っている」 結末を憂える『傍観者』の独白は、朝陽の日常が仮初めのものであることを示し、待ち受ける“何か”を読者に否応なく意識させます。一方で都市伝説の調査は進み、徐々に現実の連続失踪事件が姿を見せ始め、そして……。第一章の最後では、驚くべき事実が判明します。

思えば、違和感は各所にありました。「それは変なのでは?」「なぜ、そんなことを?」「どうして○○は○○しないの?」などとチラリと思うことが度々ありました。どれもほんの取るに足らないことで、さして気にも留めませんでしたけれども、綻びは確かに存在していた。真相を知ってから第一章を再読してみると、日常描写の中に実に多くの伏線が仕込まれていたことが判ります。

ただ、第一章ラストの時点では、どうしてもサプライズの快感より戸惑いのほうが勝ってしまいました。いきなり「僕はようやく気付いた。自分がすでに死んでしまった人間であることに──」などと言われても、突飛すぎて、「だから何」としか思えないのですね。この唐突感を和らげるには、朝陽の死の原因である事故そのものの伏線があれば良かったのではないかと思います。朝陽が一年前に事故に遭ったという事実をさり気なく印象付けるように仕込んでおいて、ラストで「そうだ、僕はあの時の事故で、既に死んでいたんだ──」というほうが、自然でしっくりくるのではないでしょうか。(事故の伏線があると、途中で気付く人が増えそうではありますが)

第二章は過去へ遡り、第一章の本編に至る経緯と、その裏側が明かされます。朝陽の日常が、どんなに危うく脆いものだったか。朝陽の幸せな日々が、何の上に成り立っていたのか。それを知るのは悲しいことでしたけれども、同時に温かさを含んだものでもありました。なぜなら、仮初めの日々を、それでも朝陽が幸せに暮らしてこれたのは、皆が優しかったから。皆が朝陽を好きだったから。葵が誰よりも朝陽を好きで、朝陽が誰よりも葵を好きだったから……。

第三章は本作の山場。全てを知り、己の運命を知った朝陽が、最悪の危機に立ち向かいます。この展開には大いに燃えましたし、胸が熱くなりました。自分の全てを懸けて、ひたむきに大切な人を守ろうとする朝陽の姿には涙がこぼれました。

ただ、犯人の動機は矛盾していて、よく解りません。[結局、単に葵に嫉妬していたということで良いのでしょうか? 愛する者を殺したくなるとかいう前振りは何だったのでしょうか。「実は葵を愛していた」というようには見えませんでしたけども。未来に対しては素直に思慕を向けていて殺人衝動も無さそうでしたし、そのような愛憎混合の性癖を持っているようには見えませんでした。] 作者さんの脳内では矛盾なく繋がっているのかもしれませんが、ノベルとして公開している以上、きちんと読者に解る形で記して納得させてほしかったと思います。

第四章は事件の後日談。残された人々のそれぞれの心の内が語られます。第三章のラストでも泣いてしまいましたが、ここでまた涙。[個人的に、健一の独白が最も胸にきました。本編中はいまいち何を考えているのか判らない人物だっただけに、彼の朝陽への真っすぐな友情を知り、涙が止まりませんでした。(ミスディレクションにひっかかって、犯人だと疑ってすまなかった)] 後日談でありながら、ここにきて初めて明かされる真実もあり、最後まで気の抜けない構成です。『傍観者』とは何なのか、『ハバロア』とは何なのか、未来と『ハバロア』の関係は何なのか。まだまだ謎も多く残っており、おそらくそのあたりは続編の『White Prologue』で明らかになるのでしょう。

最後の朝陽の遺書には、どうしてもわざとらしさを感じました。ずっと好きだった幼馴染と彼氏彼女になれて浮かれている時に、遺書を書くか普通?と思ってしまいますね。

本作の大きな特徴を挙げるとすれば、やはり第一章ラストのサプライズでしょう。実際あれには驚きましたし、数々の伏線にも感心しました。しかし、本作の肝はそこではありません。その衝撃的な事実を経てなお、主人公が何を為したか。単なるサプライズではなく、その先にあるもの──主人公の確固たる意思と行動によって、読者に感動を与えてくれました。少々ご都合主義な箇所も目に付きましたが、それを差し引いても、良作と言って差し支えない作品です。

(2006年7月2日)


【ジャンル】サウンドノベル(選択肢なし) 【プレイ時間】3時間 【容量】25.6MB 【ツール】NScripter 【参考1】ピックアップ投票結果 【参考2】感想リンク集

【HP】「ReIce -second-」 http://www.geocities.jp/reice2nd/