| - フリーゲームレビュー - │HOME│ADV:伝奇(1)│ |
高校2年生の南護(みなみ・まもる)は、遠縁の親戚である依絵に呼ばれて打追町にやって来た。この静かな田舎町の地中には、「牛鬼」という妖怪が眠っているという。護は平安時代に牛鬼を討った陰陽師の末裔であり、再び牛鬼が蘇ろうとしている今、護だけが牛鬼を討てるというのだった。4日後の牛除け祭までに牛鬼を倒すべく、護は打追の街を調べ始める。
![]() |
![]() |
和風伝奇サウンドノベル。依絵の手配で打追高校に転入した護は、街のどこかにあるという牛鬼を倒すための武器を探して情報を集めていきます。下宿先の元気な少女・黒部蘭、クラスメイトの気の強い少女・菅野美咲、神出鬼没の謎多き少女・南智恵がヒロインとして登場し、牛鬼を倒す目的と共に、彼女たちとの恋愛もメインになっています。
いちおう選択肢はありますが、事実上ストーリー分岐は無く、シナリオはほぼ一本道。「序」だけで30分、クリアまでに10時間以上かかる長編小説で、とにかく長い。これほどのボリュームだと途中でダレそうなものですが、起伏のあるストーリー展開にグイグイ引き込まれ、ほとんど徹夜して一気に読んでしまいました。
護が死の寸前に至るたびに腕輪の力が発動し、過去へ戻される。護は牛鬼を倒すまで、祭までの数日間を何度も繰り返すことになります。既読スキップが出来るため、同じ文章を何度も読む必要はありません。時を繰り返すたびに過ちを改め、少しずつ核心へ近付いていく様はスリルがあってわくわくしました。
中盤以降は物語も核心に迫り、いっそう面白くなっていきます。徐々に明らかになっていく打追町の真実の姿と、護の使命に隠された真相。これについては、早い段階で予想できてしまう方も多いかもしれません。
しかし、真実を知って絶望し、苦しみながら、それでも使命を果たそうとする護の真摯な姿には心を打たれました。
MP3版とMIDI版があり、MP3版は全曲オリジナル、MIDI版はフリー素材の曲を使用されています。MP3版の容量は約54MBでナローバンドの方には厳しいかもしれませんが、できることならMP3版をダウンロードされることをお勧めします。『ひとかた』はシナリオだけでなく、音楽も素晴らしかったから……というよりも、この音楽と歌があってこその『ひとかた』だと思うからです。
後半は、いよいよ牛鬼との対決へ。最終決戦からエンディングへ至る流れは、長い物語を締めくくるにふさわしいものでした。
[これまで何度も時を繰り返し、多くの悲しみを知り、苦しんできた護。その想いが全て昇華され、肉体も消え、ただ一筋の光となって牛鬼を貫く──。]
このラストを「呆気ない」「物足りない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。けれど、その呆気なさが物悲しさを一層
引き立て、余韻のある美しいラストに仕上がっていたと思います。
現在公開されている『ひとかた』は全年齢対象ですが、元は18禁指定の作品だったようで、ところどころにその名残が見られます。 特に護のヒロイン総食いなどは、実にエロゲーらしいと言えるでしょう。下ネタギャグの連発もエロゲーの伝統といえば伝統ですが、あまりに下品で寒すぎるので、正直これはもう少し何とかして欲しかった気もします。
18禁版の名残があること、下ネタが多いことなどにより、あまり万人にお薦めできる作品ではないかもしれません。
しかし、苦しみ葛藤しながらも宿命に立ち向かっていく護の生きざまは、きっと多くの人に感動を与えるでしょう。
2008年追記: 現在のバージョンでは下ネタ・性的表現は緩和されているようです。
(2003年9月29日)