- 同人ゲーム(シェアウェア)レビュー -  │HOMEシェア:ボーイズ


花帰葬

総評:8
★★★★★★★★☆☆
システム:5│シナリオ:7│グラフィック:7│サウンド:9
白い雪の上で目覚めた玄冬(くろと)は、全ての記憶を失っていた。そばにいた紅い髪の少年は花白(はなしろ)と名乗り、玄冬と共に旅をしていたことを告げる。何も思い出せないまま、花白と一緒に行くことにする玄冬。しかし、花白は何者かに追われているようで……?



概要
対象年齢 - 全年齢
価格 - 1800円
動作OS - Windows98SE/Me/2000/XP
頒布日 - 2003年12月28日
パッケージ - DVDトールパッケージ
ブックレット - フルカラー8P
プレイ時間 - 3時間
総プレイ時間 - 8〜10時間
ツール - 吉里吉里2
セーブ - 30個
画面 - 810 * 648
エンディング - 14種類
スチル - 36枚(+背景画32枚)
背景 - 自作画
音楽 - 志方あきこ(VAGRANCY)
コンフィグ - アニメーション効果、BGM/効果音、固有名詞・難読漢字ルビ、ウィンドウカスタマイズ(文字表示一括設定、ウィンドウ背景色、背景透明度、文字色、文字装飾)
オプション - ギャラリーモード、エンディング回想
備考 - OPムービーあり、WEB体験版あり


シナリオ
降り止まぬ雪によって侵食され、終局を迎えつつある世界。

記憶を失って目覚めた玄冬は、自分を知っている少年・花白と共に旅に出る。育ての親から逃げているという花白は、なぜか玄冬に強く執着し、玄冬以外の全てのものを憎んでいた。同じ頃、隣国の燈と哉が戦争を始め、彩国から二人のもとへ追っ手が放たれる。

目覚めた時からずっと何かに負い目を抱いている玄冬。
玄冬の何かを庇っている花白。
世界に伝わる滅びと救いの御伽話。
玄冬の失われた記憶には、何が眠っているのか……?

終末ファンタジー。記憶を失った主人公・玄冬の視点で、最初はわけも分からぬまま進みます。やがて明らかになってゆく世界の理と、玄冬の宿命。ストーリーの核は案外シンプルで、選択肢によって少しずつ違う角度から真実を垣間見、少しずつ違う結末を迎える形になっています。多様な展開を期待する方にとっては、やや物足りないかもしれません。基本的に堂々巡りのストーリーで、登場人物たちが延々同じことを言っているので、飽きるといえば飽きるかも。

世界の命運を懸けた大問題であるのに、肝心の主人公たちの心理描写が浅く、表層的な言動でループしまくりのため、いまいち感情移入しにくいものがあります。綺麗な世界ではあるものの、あまり奥行きは感じません。しかし独自の世界観が肌に合えば、とことん嵌まり込めるだけの魅力はあります。

エンディングは14種類。どれがグッドエンドで、どれがバッドエンドとは一概に言えません。誰にとって、何を以って幸せと言うのか。何が善くて、何が悪いのか。どんな結末にも必ず何がしかの犠牲があり、代価があります。それが本作のテーマでもあるのでしょう。正規エンドより心に残るエンディングも幾つかありました。

宿命に定められた二人の子供と、世界を見守る二羽の鳥。ただ静かに壊れゆく世界の美しさと、大切なものを守ろうとしてすれ違う登場人物たちの切なさ、哀しさ。それらが重ね合わされ、雪のように繊細で儚い物語が創られています。


システム
ビジュアルアドベンチャー。登場人物の会話形式で物語が進行し、選択肢によって分岐します。序盤で二つのルートに分かれますが、普通にプレイしていれば最初は正規ルートへ行くでしょう。特に理不尽な分岐は無く、一部を除けば、攻略はさほど難しくありません。正規エンドを見るとメニュー画面に「A LITTLE STORY」が現れ、おまけシナリオをニ本プレイすることが出来ます。

ノベルゲームにおける基本的な機能は揃っており、難読文字のルビ表示機能、メッセージウィンドウの多彩なカスタマイズなど、少し独特なところに凝られています。美しく洗練されたデザインを保ちながら、画面は見やすく、概ね快適にプレイできました。ただ、エフェクト等をスキップできないため、繰り返しプレイにやたらと時間が掛かるのが難点。セーブスロットも少なく、プレイの途中で足りなくなって難儀しました。せめて選択肢の数以上はセーブが欲しいところです。

OPTION GALLERY


グラフィック
細い描線と淡い色合いの塗りが綺麗で、繊細な世界観に合っています。モチーフの雪が効果的に使用されており、演出面も優れていました。立ち絵のパターンが豊富で、わずかな目元の動き、口元の動きなども含め、ポーズや表情が台詞と共にクルクル変わります。人体のデッサンがどうこう言えば若干ありえない骨格をしているかもしれませんが、この折れそうに細い腰がたまらんという方もいらっしゃるでしょう。自作の背景画では登場人物の部屋にも個性が表れていて、それらを眺めながら彼らの生活を想像するだけでも楽しめました。システムデザインも含め、視覚的な美しさが非常に大切にされています。


サウンド
使用曲41曲、歌曲6曲。BGM、主題歌、エンディング曲、挿入歌、効果音などの全てのサウンドを音楽サークル「VAGRANCY」の志方あきこ氏が手掛けられています。幻想的な楽曲が『花帰葬』の世界観に溶け込み、物語を何倍にも盛り上げていました。志方氏の美しく澄んだ歌声と音域の高さには感嘆。サウンドにおいては、現時点の女性向け同人ゲームの中では最高峰かと思われます。音楽がもたらす効果、その重要性を改めて認識させられました。


総評
全体的に、細やかに気の配られた丁寧な仕上がりでした。グラフィック、シナリオ、サウンド、それぞれが絶妙に調和して美しい「花帰葬」の世界を創り上げています。この統一性と完成度は見事。商業のボーイズゲームと比較しても、さほど遜色はありません。ボーイズラブというほどの直接的な表現は無いので、そちら方面が苦手な方でも恐らく大丈夫なのでは。
(2004年1月25日)


【参考1】攻略チャート(PC版) 【参考2】HaccaWorks様インタビュー 【参考3】ピックアップ投票結果 [2004年][2005年] 【参考4】攻略チャート(PS2版)

【製作HP】 「HaccaWorks*」 http://haccaworks.net/
【音楽HP】 「VAGRANCY」 http://www.vagrancy.jp/
2006/7/06: PS2版『花帰葬』発売 (PROTOTYPE) コンシューマ移植
2005/7/20: 志方あきこ、メジャーデビュー