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Lagrima -ラグリマ-

総評:6
★★★★★★☆☆☆☆
システム:5│シナリオ:6│グラフィック:4│サウンド:7
島の中心にそびえたつ『聖譚樹』には大地の精霊が宿り、島を守護しているという。精霊の加護を得るため、百年に一度行われる『ミゼレーレの儀』。精霊神殿の奥深くで育てられたレイソンの巫女は十六歳になると聖譚樹の元へ旅立ち、儀式を行うならわしだった。十代目の巫女である少年キリエもミゼレーレの儀を目前に控えていたが、儀式の妨害を目論む諸侯軍に襲われる。神殿武官のカノンと共に逃げる途中、キリエは謎の青年レイキエムに拉致され……。



概要
対象年齢 - 全年齢
価格 - 1700円
動作OS - Windows98/98SE/Me/2000/XP
頒布日 - 2005年12月29日
パッケージ - DVDトールパッケージ
ブックレット - カラーペーパー8P
プレイ時間 - 1時間〜1時間半
総プレイ時間 - 6時間
ツール - 吉里吉里2/TJS2
セーブ - 60個 (サムネイル有、コメント有)
画面 - 800×600
スキップ - 既読のみ
エンディング - 12種類
スチル - 34枚
背景 - 自作画:33枚
音楽 - 遠来未来:26曲
主題歌「Lagrima-きみがいる世界-」、挿入歌「いのりのこえ」
コンフィグ - 音量調節、文字速度調節、画面サイズ設定、フォント設定
オプション - CG鑑賞、ED鑑賞、おまけシナリオ
備考 - OPムービーあり、WEB体験版あり


シナリオ
権力争いに巻き込まれ諸侯領の塔に囚われたキリエは、神殿武官のカノンに救い出され、ミゼレーレの儀を行うため聖譚樹を目指します。キリエの前に幾度も現れる謎の青年レイキエム、巫女の誘拐を企む盗賊クレド、樹海で人間を襲うラクリモーサの魔女。百年に一度繰り返される儀式の真実とは……?

場面転換が唐突で、日数や時間の経過が判りにくい。たとえば、序盤の内殿で巫女長に見つかってカノンと別れた後すぐに軍が襲ってくるように見えるのですが、これはおそらく数日経っているのでしょうね。そういうことを推測するのに手間取ってしまいます。他にも場面が唐突に変わって状況の把握に戸惑う箇所が幾つかありました。

必要な場面、必要なエピソードだけが繋ぎ合わされているため、シナリオ内のエピソードはどれもこれも伏線です。逆に言うと、いかにも伏線なのね、というエピソードしかありません。ムダが無いといえば無いのですが、そのように「はい、次」「はい、次」とばかりにセカセカ進めなくても、もう少しゆとりを持たせても良かったのではないでしょうか。おかげでライターさんの小手先ばかりが見えて、肝心のキャラクターの感情や心の動きがいまいち伝わってきませんでした。一周目の結末は早々に予想できるため、キャラクターに感情移入できないまま予定調和の「悲劇」を見せられて辟易しました。

そんなわけで、一周目の感想は「ありきたりな薄っぺらい話」でした。けれど、二周目以降、各ルートをプレイしていくうちに少しずつ印象が変わっていきました。レイキエムの正体やキリエの生い立ちなど、様々な事実が判明してゆき、世界の形が見え始め、散らばっていた伏線が繋がり、次々と明かされる真相に次第に惹き込まれていきました。

人間の過ち。精霊の祈り。託されていく想い。千年の時を経た真実。全てのエンディングを見終える頃には、この世界を好きになり、登場人物の一人一人を愛しく思えるようになっていました。そうしてキリエにもカノンにも思い入れが出来た状態で一周目のエンディングを再び見てみると、今度は二人の感情が素直に伝わってきて、心を動かされました。

主人公の少年キリエは愛らしく可憐で、外見も中身もか弱くて女の子そのもの。主要人物の全員から愛され、守られ、お姫様のごとくに大事にされています。あっちに拉致られ、こっちに拉致られ、『王家の紋章』のキャロルに匹敵するほどの見事なヒロインっぷり。個人的にナヨナヨした受は大の苦手ですので、普段ならこういう受キャラを見ると張り倒したくなるところですが、キリエに対しては不思議と不快感はありませんでした。むしろ健気で可愛いと思います。あまりにも男をやめているので、普通に女の子として好きなのかもしれません。ちなみにキリエがほとんど女の子同然であることは、物語上、いちおう理由があります。

それにしても、一周目の時点ではてっきりカノンが正ヒーローだと思っていたのですが、実は彼は思いっきり蚊帳の外で、逆にめちゃくちゃ怪しかったセクハラ誘拐犯が運命のお相手だったとは(笑) このあたりも意外で面白かったです。キリエと魔女の百合カップルも可愛いですね。

個人的には、ツンデレ巫女長に萌えた。厳しくて、冷たいようにも見えるけれど、本当はキリエを深く愛している巫女長様。素敵です。「Dona nobis pacem」エンドの巫女長がまた泣かせるのですよ、これが。おまけ本で巫女長&キリエの過去話などの予定はないのでしょうか。キリエの内殿幼少時代をぜひ。巫女長様のツンデレっぷりをもっと詳しく!


グラフィック
立ち絵はそれなりに綺麗なのですが、スチルが貧相で差が激しい。塗りが雑で、構図に工夫が無い。キャラの表情やポーズが画一的で、表現の幅が狭い。場面の臨場感が全く伝わってきません。

たとえばクレドのグッドエンドのスチルなどは、ピンクの背景にクレドとキリエが新コスチュームを着てカメラ目線で突っ立っているだけなのですが、これは一体何を表現したかったのでしょうか。二人の新しい暮らしぶりを絵で描くなら、もっと具体的に、いくらでも描きようはあったと思います。タイトル画面のイラストも、あまりにも面白味がないので、クリア後に絵が変わる形式かと思いきや、最後までそのまんまでガックリきました。

一枚絵に魅力が無いのは、ビジュアルノベルとしては痛い。本作は製作サイトでは「ビジュアルサウンドノベル(絵+音楽+物語)」と謳われていますが、今の状態では「ビジュアル」が他の二つに全く追いついていません。画力については置いておくとしても、もっと丁寧に描き込むことで、出来映えはだいぶ違ってくると思います。

キリエがカノンに抱きつく場面で、カノンがキリエを後ろから抱きしめる場面のスチルが使い回されているのはどうかと思いました。似てはいますが、抱きつくのと抱きしめられるのとでは全然ちがうでしょう。変なところで手抜きしないでほしい。


システム
地の文が無く、登場人物の会話形式で物語が進行します。初回プレイでは必ず「Libera me」エンドへ到達し、二周目以降から選択肢が増えて各ルートへ行けるようになります。選択肢の数が多く、わかりにくい分岐もあるので、攻略は割と難しめでしょうか。全てのエンディングを見ると、おまけシナリオが現れます。

画面上部のメニューバーが無く、メッセージウィンドウのアイコンメニューのみで操作をする仕組み。小さな絵アイコンがちんまり並んでいるので、セーブ・ロードなどをする度に「どれだっけ?」と一瞬迷ってしまいました。アイコンメニューはマウスでしか操作できず、少し不便。

エンディングリストの文字がうねっていて、エンディングのタイトルが読みにくい。というか、読めない。字体に凝るのも良いのですが、システムに関しては読みやすさ、わかりやすさを優先してほしい。

スキップは既読のみ。できれば未読スキップもあれば嬉しかったでしょうか。別に未読の文章を読む気が無いから飛ばしたいというわけではなく、ユーザー側もゲームのデータを失ったりして、様々な事情で未読スキップをしたい場合がありますので。

オープニングムービーの鑑賞モードが無いのは不便です。「NEW GAME」で観れることは観れるのですが、ムービーの後に続いてゲームが始まってしまうので、ムービーを何度も繰り返し見たい場合、ムービー→ゲーム→コンフィグ→タイトル→NEW GAMEという手間を何度も繰り返さなくてはなりません。ちなみに私はムービーを100回以上観ましたが、かなり手間でした。

その他
・テキストの「───」の線に太字が混じって、ところどころズレているのが気になりました。
・ブックレットはペラペラのペーパーで、ややショボイ。


サウンド
E-M WORKS(遠来未来)の逆凪諒氏による26曲。優しく繊細な旋律に民族調の曲も加わって、心休まる綺麗な楽曲が揃っています。中でも、主題歌「Lagrima-きみがいる世界-」は『Lagrima』の世界に沿った温かく切ない歌で、何度も繰り返し聴きました。ゲームを全てクリアした後でこの歌を聴くと、「ただ君が幸せなら 失うこともかまわない」のくだりで泣けますね。(そういうシナリオなのです)


総評
花帰葬』の影響を受けているような部分も見受けられますが、本作は本作で独自の世界観を持っていますので、さほど気にはなりません。最初はシナリオに物足りなさを感じましたが、プレイを繰り返すほど物語が深まり、味の出てくる作品でした。一応ボーイズゲームではありますが、実はボーイズの皮をかぶったノーマル男女ものかもしれません。
(2006年2月17日)


【参考1】攻略チャート 【参考2】Enoichian様インタビュー 【参考3】ピックアップ投票結果

【製作HP】 「Enoichian(エノイキアン)」 http://enoichian.que.jp/
【音楽HP】 「遠来未来」 http://e-m.afz.jp/