- 同人ゲームレビュー -  │HOMEシェア18禁(1)


冬は幻の鏡

総評:8
★★★★★★★★☆☆
システム:4│シナリオ:8│グラフィック:4│サウンド:7
北海道野別市にある市立南陽高校では、四年前から、ある噂が流れていた。四階の女子トイレに交通事故で死んだ男子留学生の幽霊が出るという。ほとんど忘れられていた幽霊話だったが、今年の夏に転校してきた女生徒の証言によって、再び噂にのぼり始めた。終業式を控えた三月のある日、放送部の部員たちは幽霊を見るために夜の学校へ忍び込む。それが“事件”の発端だった……。



立花 鈴夫
南陽高校一年生。放送部員。常に曖昧な笑顔を浮かべている。
和泉 和歌奈
南陽高校一年生。放送部員。鈴夫を好きだが素直になれない。
田之上 小太郎
南陽高校二年生。放送部部長。陽気で面倒見がいい。
音 早織
風俗嬢。元・南陽高校放送部員。イタズラ好きのサディスト。
御堂 道明
南陽高校二年生。放送部副部長。小太郎の親友。
長池 小月
湖陵中学校一年生。登校拒否児。隠れ家の廃屋で過ごしている。
???
小太郎や道明の前に現れる謎の男。ゆうの兄を名乗る。
仁科 ゆう
南陽高校一年生。夏に東京から転校してきた。物静かで無表情。



概要
対象年齢 - 18禁
価格 - 2000円
動作OS - Windows98/Me/2000/XP
頒布日 - 2003年8月17日
パッケージ - CDケース
ブックレット - 無し
プレイ時間 - (1ルート) 4〜5時間
総プレイ時間 - (クリアまで) 20時間
ツール - NScripter
セーブ - 20個
画面 - 640×480
スチル - 111枚 (差分含む)
背景 - 写真
音楽 - オリジナル23曲、主題歌「白い記憶」
メニュー - オートクリックモード(クリックスピード設定、文章量に応じて可変)、テキスト回想モード
オプション - チュートリアル、サウンドモード、ビジュアルモード、キャラクター紹介、オープニングムービー再生
備考 - OPムービーあり、WEB体験版あり


シナリオ
小太郎ルート


一大決心をして風俗店「フェランス革命」へ行った小太郎は、風俗嬢の早織と知り合う。早織は南陽高校の卒業生で、留学生の幽霊クリス・ジョンソンのかつての恋人だった。幽霊の彼に会いたいという早織に付き合い、小太郎は夜の学校へ忍び込むことに……。

和歌奈ルート


和歌奈と鈴夫は留学生の幽霊のドキュメンタリーを企画し、居残った夜の学校で本物の幽霊と遭遇する。ゆうに助けられ、幽霊騒ぎは無事に解決したが、和歌奈は道明の恋人である小月の正体に疑問を持ち始め……。

道明ルート
登校拒否児の小月と肝試しに行った夜の学校で、幽霊騒ぎに巻き込まれた道明。その日を境に、道明の心に激しい性衝動と殺人衝動が芽生える。小月を犯して殺したい衝動に苦悩する道明の前に、ゆうの兄を名乗る男が現れ……。
北国の高校を舞台とした学園伝奇ホラー。2003年3月10日(月)から15日(土)までの6日間の物語を、小太郎・和歌奈・道明の三人の視点から読み進めていきます。それぞれのルートをプレイするごとに様々な謎が明らかになってゆき、各人の心理の違いや行動の意味が解っていくのが面白い。どのルートからプレイしても構わないとは思いますが、小太郎→和歌奈→道明の順に陰惨度が増し、真相へも近くなっていくので、一応この順番をお薦めします。それぞれのルートは独立しているので、小太郎(1日目)→和歌奈(1日目)→道明(1日目)→小太郎(2日目)→和歌奈(2日目)……という並行プレイでも良いかも。

下品でお馬鹿なことばかりやらかす放送部の面々が、なんとも笑えます。男だらけの野球拳大会を開催したり、江戸川乱歩の人間椅子を再現したり、バイブでホットケーキの粉をこねたりと、縦横無尽なバカっぷり。このような男性特有の悪ふざけには少々ついていけないものもありますが、いかにも高校生男子らしくて可愛いですね。和歌奈をいじめて可愛がる小太郎と道明の様子も微笑ましく、この仲の良い放送部をずっと見ていたい気持ちになります。それだけに、後半になってくると、いろいろ辛い。

どのルートも面白く読めますが、中でも小太郎ルートは漢一直線。勢いがあり、ぐいぐい読ませます。親友の道明に遅れをとりたくなくて風俗へ行ったり、彼女が出来た道明に複雑な思いを抱いたり、人を好きになるということについて悩んだり。等身大の男の子である小太郎が可愛い。何も考えず馬鹿騒ぎばかりしているように見えて、周りの人を気遣う優しさ、責任感の強さは人一倍。小太郎は本当に、いい男です。親友の道明を大切に思い、初恋の音さんを大切に思い、後輩の鈴夫や和歌奈を大切に思い、皆がニコニコハッピーエンドになれるように頑張る小太郎の姿を見ていると、胸が熱くなりました。

三つ全てのルートを終了すると、“四人目”の視点の最終ルートが現れます。南陽高校で起こった事件の背景、“彼”と“彼女”の現在と過去、これまでの謎が全て解明され、事件の全体像が明らかになります。各所に張られていた伏線をザクザク回収していくのが楽しく、時間を忘れて一気に読んでしまいました。ラストは鈴夫視点のエピローグで締められており、物語の始めと終わりが繋がって綺麗にまとまっています。

この作品に登場する男性たちは皆、何らかの業を背負っています。一人は偽りの笑顔に全てを隠し、一人は取り戻せない過去に縛られ……。そうして苦しみながらも、彼らにとってただひとりの女性を深く愛している。そんな彼らの心が切なく哀しく、胸に迫ります。それに比べると、女性陣はいまひとつ魅力に欠けるような。マイペースすぎたり、自己中すぎたり、類型的すぎたり。彼らが命をかけて愛するほどの価値が、彼女たちにあるのかと思ってしまうのです。女性陣にはもう少し頑張って欲しかったかもしれません。(ゆうの不器用さはなかなか可愛かったですが、極悪変態Mだしなあ)

読者を引き込む筆力は素晴らしいと思いますが、唯一、文章には大いなる問題があります。何をトチ狂ったのか、一人称と三人称がゴチャ混ぜで使用されていること。ライトノベルによくあるような、章ごとに人称が変わるというものではなく、一人称の文の最中にいきなり三人称が乱入してきたり、三人称の文章の中に一人称の視点が混ざっていたりというカオスな状態です。ここまで滅茶苦茶な視点の乱用は、アマチュアの中でも初めて見ました。視点の統一は、小説を書く上で基本の基本です。そのルールを破ると、本作のようにカオスな有様になります。読んでいるうちに次第に慣れてきて違和感を覚えなくなってくるのが、これまた怖い。変な文章を長時間読むと、こちらの感覚まで変になる。その意味でも、はっきり言って迷惑なテキストです。次作からは、これだけは直してほしい。


システム
三人の視点から一つの物語を読み進めていくマルチルートノベル。最初に鈴夫視点のプロローグがあり、その後、小太郎ルート・和歌奈ルート・道明ルートへ分岐します。チュンソフトの『街』のように選択肢によって別ルートの展開が変化するわけではありませんが、ザッピングの面白さは存分に味わえました。

バッドエンドへ行くと小月と夕のヒントコーナーがあり、その後に「このまま始める」「タイトルに戻る」という選択肢が出ます。「このまま始める」を選ぶと直前の選択肢から再開されるのかと思いきや、なぜかプロローグの一番最初まで戻ってしまいます。普通、バッドエンドになったプレイヤーが、またプロローグから始めたいなどと思うでしょうか。

セーブスロットは20個ありますが、普通にプレイしていると全く足りません。各ルートで1日ごとにセーブするとして、6日間のデータを4人分残すだけでも最低25個は欲しいし、もちろんそれ以外にも選択肢ごとにセーブしたい。少なくとも50個以上は無いと困ります。

ロード時にはダイジェストウィンドウが現れ、その場面の要約を読むことが出来ます。どれがどのシーンのデータなのか克明に判るのは有り難かった。普通の要約だけでなく、たまに変なお遊び文が混ざっていたりして楽しめました。他にも文章量考慮式オートクリック機能など、少し変わった部分に手が入っています。ただ、スキップに既読未読の判別が無い、バグあり、誤字脱字が多すぎるなど、基本的な部分で難多し。特に誤字脱字の多さは、かなりのものです。


グラフィック
良い絵もあれば、あまりに酷い絵もあり、ばらつきがあります。CG枚数は多いのですが、多ければいいというものではないことを、この作品で実感しました。原画を二人で担当されているだけでなく、絵師さんの絵にもムラがあるようで、同じキャラでも絵によって全く違います。ジャケットで冷笑している彼、誰かと思ったら鈴夫でしたか。別人すぎて、クリアするまで分かりませんでした。

シナリオと絵の描写の食い違いも目立ちます。シナリオでは小太郎がズボンを半分脱いでいるだけなのに、スチルでは全部脱いで裸になっていたり。シナリオでは聡美がゆうに正面から抱きついているのに、スチルでは横から抱きついていたり。シナリオでは道明が和歌奈の後ろ髪を引っ張って顎を上げさせているのに、スチルではサイドの髪を前に引っ張っていたり。その他諸々。人物の表情などがシナリオとスチルで全く異なっていて違和感を覚えることも多々ありました。


総評
荒削りですが、今まで見たことの無いようなアクの強さと泥臭い魅力があって新鮮でした。登場人物の半数が男性で、しかも女性キャラより男性キャラのほうが魅力的に描かれているあたり、男性向け作品としては異色かもしれません。男性向けで男性キャラがしっかり書き込まれている作品は、個人的に好感度大。随所でやたらと不備の多い作品でしたが、ストーリーのパワーは群を抜いており、非常に惹き込まれました。ボリュームもあり、読み応えは充分。シナリオを重視する方にお薦めします。(女性ユーザーにもオススメ)
(2004年4月27日)


【HP】「半端マニアソフト」 http://hanpamania-soft.com/