ひぐらしのなく頃に
総評:8
★★★★★★★★☆☆
システム:5│シナリオ:8│グラフィック:3│サウンド:5
昭和58年、初夏。寒村の雛見沢へ引っ越してきた前原圭一は、親しい友人たちも出来て楽しい日々を送っていた。ある日、圭一はふとしたことから雛見沢村で過去にバラバラ殺人があったことを知る。事件について尋ねると、友人たちは固く口を閉ざすのだった。やがて「綿流し」の祭りの日が近づき……。
概要
| 対象年齢 |
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全年齢 |
| 価格 |
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1500円 |
| 動作OS |
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Windows 95/98/Me/XP (NEC PC-98シリーズ除く) |
| 頒布日 |
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2004年9月(プレス版) |
| パッケージ |
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CDケース |
| ブックレット |
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無し |
| プレイ時間 |
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(1ルート) 7〜8時間、(暇潰し編) 3時間 |
| 総プレイ時間 |
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25時間 |
| ツール |
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NScripter |
| セーブ |
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18個、随時セーブ・ロード可能 |
| 画面 |
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ウィンドウモード(640 * 480)、フルスクリーンへ切替可能 |
| スキップ |
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メニュー「選択肢まで進む」 |
| スチル |
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無し |
| 背景 |
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写真加工 |
| 音楽 |
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フリー素材 |
| おまけ |
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音楽室、お疲れさま会、ミニゲーム、TIPSを読む、スタッフルーム、シナリオロック |
| オプション |
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シナリオジャンプモード |
| 備考 |
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WEB体験版あり(鬼隠し編を最後までプレイ可) |
システム
猟奇ミステリーホラーサウンドノベル。本編「鬼隠し編」「綿流し編」「祟殺し編」と外伝「暇潰し編」の4つのシナリオが収録されています。今回のディスクは謎の提示編にあたり、解答編にあたる「ひぐらしのなく頃に解」は現在(2004年9月)開発中。メインシナリオの合間に「TIPS」というサブイベントを入手するシステムがあり、刑事たちの会話や過去の新聞記事など、主人公では知り得ない情報を知ることも出来ます。
選択肢が一切無い代わりに、作者からユーザーへ差し出された挑戦状。 『惨劇に挑め』
『正解率1%』 ただ漫然と読み進めて解答を得るのではなく、プレイヤー自身が考え、推理して真相を探る。それが本作品におけるゲーム性とも言えるでしょうか。公式掲示板や他のWEBサイトでは既に多くの推理や考察が公開されており、自説は様々。それらを見て廻りながら、自分の推理と比較していくのも楽しい。早く真相を知りたい気持ちもありますが、ああでもないこうでもないと頭を悩ませている今が一番楽しい時期なのかもしれません。
システムまわりは普通のNスクノベルですが、一度クリアしたシナリオを好きな日付からプレイできるシナリオジャンプモードは嬉しい機能です。気になったのは誤字脱字が目立つことと、未完(続き物)であることがパッケージのどこにも書かれていないこと。店頭で購入する人が誰しもサイトを見ているわけでもないでしょうし、そういう大事なことはきちんと書いておくべきだと思います。
シナリオ
雛見沢村連続怪死事件。毎年、綿流しの祭りの日に必ず一人が死に、一人が失踪する。昭和54年のダム工事現場監督のバラバラ殺人を皮切りに、雛見沢ダム計画の関係者が次々と怪死を遂げてきた。オヤシロさまの祟りか、人間による陰謀か。そして5年目の今年も、綿流しの日に何かが起こる──。
それぞれ同じ時間軸ながらも異なる物語へ派生し、全く違う結末を迎える3編。「鬼隠し編」では連続怪死事件の一端に触れ、「綿流し編」では雛見沢の歴史の暗部が明らかになり、そして「祟殺し編」では致命的な結末が待ち受けています。シナリオを進めるごとに謎は増すばかりで、プレイしているこちらの推理も二転三転、混迷を極めるばかり。作者の掌で踊らされていると自覚しながらも、同時に“踊らされる快感”がありました。
文章は荒くて大味ですが、平易で読みやすく、勢いと臨場感があります。ただ、台詞の最後に句点「〜〜。」が付いているのは気になりました。括弧を閉じることで既に文の終わりを意味しているので、句点は余計です。
鬼隠し編
レナ編。前半はギャルゲー風コメディタッチ。毎朝登校時に迎えに来てくれる幼馴染ご近所さんのレナを始め、「〜ですわ」喋りの沙都子やボク女の梨花など、ベタすぎるヒロインたちとベタベタな日々を過ごします。この痛々しいとも言える日々が二時間以上延々と続くため、なかなか辛い。正直ギャルゲーに耐性があっても辛いものがありますので、耐性の無い方にはかなり苦痛かもしれません。
どこまでも続くかと思われた平穏な日常。しかし、綿流しの夜から何かが狂い始めます。刑事の大石が現れ、にわかにキナ臭くなる圭一の周辺。やがて訪れる転換点。今まで信じていた当たり前のものが瓦解する一瞬。戦慄。恐怖。世界の反転。鬼隠し編の醍醐味は、この一瞬に集約されていると言っても過言ではないかもしれません。以降は異常事態の連続で、追いつめられ逃げ場を失くしていく圭一の心情が丹念に描かれ、鬼気迫ります。何気ない日常生活にふいに差し込まれる恐怖、その明暗の落差が実に効果的。物語は凄惨な展開を迎え、恐ろしくも奇怪な結末へ。残ったのは謎、そして謎……。
鬼隠し編の最大の難点は、やはり前半の日常描写の冗長さでしょう。独特すぎるオタ絵に加えて、オタ臭い日常がひたすらダラダラ続くため、一部の特殊なギャルゲーユーザーを除けば大多数の人間が途中で脱落すること間違いなし。後半のホラー展開への布石として平和な日常描写は確かに必要ですが、後半へ至るまでに挫折するプレイヤーが続出するようでは意味が無いのでは。前半の日常部分はせめて一時間以内に抑えるべきだったと思います。
綿流し編
魅音編。シナリオ前半は切ない系ギャルゲーモードで胸をキュンとさせてくれます。いつも自信満々で男勝りな魅音。けれど、本当は傷つきやすい普通の女の子なのでした。顔を赤らめてオタオタする魅音が異常に可愛い。普段はあんなに親父臭いくせに、このギャップは反則かも。このまま最後まで魅音との青春ラブストーリーでも良いのではなかろうかと思いかけた頃、綿流しの日がやってくるのでした。
雛見沢の血塗られた因習と、「綿流し」の本当の意味。悪戯心で禁忌の祭具殿へ忍び込んだことから、圭一は恐ろしい事態に巻き込まれていきます。鬼隠し編をクリアして既に心構えはあるつもりでしたが、今回はまた違った種類の恐怖を見せられ、一段と怖い。綿流しの夜から毎夜人が死に、人が消える雛見沢。圭一がどんどん追いつめられる一方で、捜査を着々と進めていく警察側の動きも面白い。やがて犯人は罪を自供し、全ては終わったかに見えた……と思ったら、またまたどんでん返し。最後の最後に告げられた不可解な事実。残るはまたも、謎ばかり。
本作は「昭和58年」という時代設定が為されていますが、作中でコードレス電話が普通に使用されているなど、気になる点も幾つかあります。作中の時代考証は、当然徹底するべき。製作者の都合の良い部分だけ「昭和58年」では意味がありません。「カードキャプターさくら」など、唖然とする単語も多く登場します。これらのオタクネタは“ネタ”として流せないこともありませんが、作者が時代考証をいいかげんに考えていることの証明にも思えます。
祟殺し編
沙都子編。鬼隠し編の前半ではあれほど鬱陶しかった日常シーンも、惨劇を繰り返して三編目にもなると、とても貴重な日々に思えます。スク水、メイド、ウェイトレスとあらゆるジャンルを制覇しつつある圭一のコスプレスチルが無いのは残念至極。いなくなった兄の面影を圭一に重ねる沙都子のために、圭一は彼女の兄代わりになってやることを決意します。ところが、興宮で暮らしていた沙都子の叔父が雛見沢へ戻ってきて……。
後半は、今までに無かった新展開が起こります。オヤシロさまの祟りと呼ばれる雛見沢連続怪死事件。これまでのシナリオでは、圭一は狂気と悪意に包囲され、追いつめられていく恐怖が描かれてきました。しかし今回は[圭一自身が狂気を宿し、祟りを執行する側に回る]のです。そう来たか!と思わず膝を打ちました。一連の行為が綿密に描写され、手に汗を握ります。やがて元の日常に戻るかと思いきや、物語はまたも不可解な方向へ。予想もし得なかったとんでもないラストには呆然。
ところで、いくら知恵先生がシリアスな場面で深刻な台詞を言っても、立ち絵が埋葬機関の人では気が削がれるわけですが。せいぜい綿流し編の「カレー好きの知恵先生」あたりで留めておいて欲しかった気がします。作中に遊び心を入れるのは悪いことではありませんが、そっち系のネタに関しては少々悪ノリが目立ちました。
まとめ
細部では気になる点も多々あるものの、ぐいぐい惹きつけて読ませるストーリーテリングには素直に感服しました。「鬼隠し編」では突然の日常の崩壊に恐怖し、「綿流し編」では掛け値なしの異常事態に怯え、「祟殺し編」ではあまりのことに茫然自失。シナリオを重ねるごとに新たな恐怖、新たな謎が生まれ、目を離せません。特に終盤からラストへ至る畳み込むような展開には、毎回息を詰めました。謎に包まれた終幕はクリア後も頭にこびりつくようで、ぜひとも解いてやろうじゃないかという意欲を湧かせます。ホラーサスペンスとして純粋に面白く、皆で推理して二倍楽しい、様々な楽しみ方ができるシナリオです。
グラフィック
プニプニした丸っこい絵柄で、人体の一部が恐ろしいほどデフォルメされています。女の子の丸っこさはともかく、中年の親父さえもプニプニ(というかブヨブヨ)しているため、初めて見た時はなかなか衝撃でした。かなり独特な絵柄ですので、受け付けない人も多いかもしれません。
祟殺し編では、沙都子の全裸な立ち絵も登場します。シナリオ的には一応切羽詰った状況なのですが、全裸の必然性があるのかは甚だ不明。なんだかヤバい部分に線が入っているように見えるのですが、全年齢のゲームとして、これはどうなのでしょうか。他の部分はありえないほどデフォルメしているのに、局所のスジにはこだわるんかい、という気もします。
暇潰し編では五年前の梨花が登場しますが、本編と同じ立ち絵を使い回されているのは残念でした。定年近くの大石なら
五年前でも十年前でも さほど変わりは無いでしょうけれど、梨花の年頃なら外見は大きく異なるはず。沙都子のスジ入り全裸を描く気力をこちらに回して欲しかったかもしれません。
サウンド
音楽はフリー素材ですが、BGMや効果音の使いどころは上手い。ここぞという場面の演出で、シナリオを引き立てています。ただ、一部の曲に音割れがあり、聞き苦しいのは残念でした。
総評
絵は稚拙で、スチルは一枚も無く、BGMは音が割れている。これで1500円は高いと言いたいところですが、それらを補って余りあるシナリオの密度とボリュームには充分満足しました。作品に対する正式な評価は解答編を見届けた後になりますが、現時点でこれほど楽しませてくれたこと、そのエンターテイメント性は高く評価されて然るべきかと思います。まだ見ぬ解答編がどのような出来であれ、本作を購入しても損はありません。
(2004年9月27日)