三池三太は普通の高校生。ある日、コンビニへ買い物に行こうとしていた三太の目の前に、隕石が墜落する。燃えさかる瓦礫の中で戦っていたのは、星を落とした魔法少女と針金のような男。少女サカナは異世界の芯地から針金を追ってきた衛星軌道精霊だった。針金を逃がしてしまったサカナは、三太に協力を請う。「捜査を手伝ってくれたら、トータチスを止めるよ」 小惑星トータチスが街へ落ちるまで、あと6日──。
ファンタジー伝奇ノベル。ディープインパクト版ではサカナルートを最後までプレイできます。いきなり目の前に隕石が落ちてきて、魔法少女と謎の男が住宅地の真ん中でバトルを繰り広げる衝撃のオープニング。このオープニングでわくわくした人なら、その後の展開もスムーズに楽しめるでしょう。ちなみにサカナが作中で魔法少女の衣装を着ることはほとんどありませんし、全裸になったりする変身シーンなどもありませんので、そちら方面の期待はしないように。
異世界の芯地では、サカナたち「高原族」と針金たち「銀の目族」が領土を巡って戦争しています。針金は人間の精神エネルギーを集積して芯地へ送るため、サカナはそれを妨害するため、それぞれこの世界へやって来ました。針金をこの世界へ召喚したのは、半年前から世間を騒がせている連続猟奇殺人鬼。6日後までに針金と召喚者と孵化地を見つけなければ、街にトータチスが落ちてしまいます。駒岡町を治める龍王姉妹の協力を受け、三太は学園に潜む召喚者をおびき出すことに。
ギャグとバトルを織り交ぜながらテンポ良く進んでいきますので、ダレることなくどんどん読めました。ほどよく力の抜けたギャグに三太のニュートラルなツッコミが絶妙で、ツボに入ればかなり笑えます。特に猫先生のアレやアレには爆笑。猫先生のエロブースターパッチ(受け攻め両バージョン対応)は出ないのですか。こういった系統のノベルでは往々にして日常場面の退屈さやギャルゲー系の寒いギャグがネックになっていますので、ギャグを楽しく読める作品は、それだけで貴重かもしれません。
平易ながらもリズム感のある文章で、その場の臨場感がダイレクトに伝わってきます。黒犬に襲われるくだりの学校のチャイムによる二段構成など、場面場面の盛り上げ方が上手いですね。三太が月夜の街へ感覚を飛ばした際の抽象的な視覚や、キョロリンの融合で文字が流れる演出など、能力発現のシーンも面白い。
ただ、「○○みたいなことはできないのか?」「できますよー」 「○○があればなあ」「ありますよー」など、主人公の欲しいものが何でもかんでもドラえもんのごとくにサッサと用意されるのは都合が良すぎないでしょうか。魔法探知機仕込みの仮殻時計やら秘匿通信機やら便利アイテムも満載で、なにやら名探偵コナンを見ているかのような微妙な気持ちに。主人公が妙な力に覚醒したりせずに最後まで弱いままだったのは良いと思いますが、何でもありの最強武器の芭蕉扇でパワーアップ!となると、それはそれでどうかと。
天使、悪魔、龍、魔術師。強大な力を持つ者たちの戦いの中で、非力な主人公が知恵を使って犯人を追いつめていく……という流れですが、どうも三太の思考が突飛すぎて付いていけませんでした。
たとえばサカナから銀の目族の擬体の話を聞いて、針金を呼び出した者がこの世界にいることを見抜く三太ですが、なぜ擬体の話からいきなり「悪魔召喚」へ発想が飛ぶのでしょうか。悪魔召喚だの生贄の儀式だの、そんな偏ったオカルトマニアみたいな知識を、さも一般常識であるかのように思考する三太が異常に見えます。
「奴は魔法が使える。だとしたら、絶対に奴はこの現場を魔法で見ている」という推理も唐突な気がします。三太はこの時点で魔法に対する知識が全く無く、魔法がどういうものなのか、どんな性質のものがあるかも全く知らないのに、なぜ“見る魔法”とやらが存在すると確信しているのでしょうか。その発想はどこから来たのでしょうか。
「獅子王院家で借りた強力な武器で、死骸兵や黒犬を倒していく」という提案も同様です。魔物を倒せる魔法武器が存在するという前振りはそれまで全くありませんでしたし、獅子王院家にそのような武器があるかどうかも三太は全く知らないのに、「獅子王院家で借りた強力な武器で」などという発想は一体どこから(以下略)。
毎回そうやって唐突な自説を披露して、「その通りです。三池君、さすがですー」などと感心されるパターンですが、三太の頭が良いようには到底見えません。作者が用意した筋書きの上を都合よく動かされているようにしか見えないのです。
エロゲーらしく(?)ヒロイン全員から想いを寄せられてモテモテの三太ですが、1日でとっかえひっかえヒロイン全員とラブシーンをこなす主人公はさすがにめずらしいかもしれません。エロゲーの主人公の根拠のないモテにいちいち突っ込んでも仕方ないとは思いますが、それにしても三太の節操の無さにはちょっと呆れる。「みんな好きなんだ」と全員キープしつつ、可愛いクラスメイトにもちょっかい出しつつ、互いに譲り合って遠慮し合う女の子たちを高みの見物。何と言いますか、良いご身分ですね。いっぺん痛い目に遭え。
終盤はいよいよ召喚者との対決。召喚者の正体には驚きました。……驚きましたが、召喚者が「この人」である必然が、いまいち感じられませんでした。なぜ三太を執拗に襲ったのか、何を思ってこれだけの犯行に至ったのかも結局わからないままでしたし、三太との対決でもただサイコっぷりを見せつけただけで、底の浅い小物にしか見えませんでした。散々正体を引っぱったあげくにこれでは、少々ガックリです。「この人」に関しては別ルートもあるようなので、そちらでフォローされるのかもしれません。
殺された皆が魔法で生き返るのは勘弁してほしかった。そんな風にホイホイ生き返ると、人の生も死も、とても軽く感じられます。理不尽に死んだ人々が皆生き返るなら、世話は無いのではないでしょうか。片山事件で巻き込まれた能力者たち、召喚者の儀式の生贄にされた人々、今回の事件だけでも沢山の罪のない人々が命を落としてきました。彼らは死んだままで、三太やクラスメイトたちは生き返ってめでたしめでたしなのでしょうか。ずいぶんとお手軽なハッピーエンドだと思います。
他にもご都合主義な部分やチグハグな箇所は多々ありました。とはいえ、なんだかんだ言って終盤は盛り上がりましたし、ラストはお約束だと思いつつも、しっかり感動してしまいました。本作を読みながら、笑ったり、ハラハラしたり、泣いてしまったり。心を揺さぶられるものは、確かにありました。あまり細かいことを気にしないようにして読むと、ちょうど良いのかもしれません。
伝奇ファンタジーノベル。半身版ではエンドルート1本とサカナ・白石のエロ日シナリオ2本が追加されています。当初予定されていた桃子ルート、香澄ルート、NMRルートは撤廃され、サカナルートが唯一のメインルートになるようです。前回のディープインパクト版では一本道のサカナルートを最後までプレイできましたが、今回の半身版ではシナリオ後半で新たな選択肢が追加され、それによってD(ディープ)エンドルートとU(アップ)エンドルートへ分岐します。他にもエピソードが追加され、ディープインパクト版で不自然だった三太の思考なども幾つか修正されています。
U(アップ)エンドルートは三太が犯人に監禁されるシナリオで、ディープインパクト版では不明だった犯人の動機なども一応判明します。ただ、犯人が三太を執拗に襲った理由は、なんだか後付けっぽく感じました。監禁から脱出へのくだりは緊迫感があって楽しめましたが、犯人との決着はお綺麗にまとまりすぎていて、いまひとつ感じるものがありませんでした。お約束ながらも感動したサカナのDエンドに対し、犯人のUエンドはお約束で鼻についた、といったところです。
D(ディープ)エンドルートは大まかな流れはディープインパクト版と同じで、あちこちが微妙に変更されています。サカナの「某毛」が「鱗」に変更されていたのは正直ホッとしました。あのシリアスな場面で某毛はないだろう、某毛は、と思っていましたので。ラストシーンもディープインパクト版より良くなっていますね。ただ、例の室内プールのクラスメイトたちのアレについては、やはり微妙でした。
- ディープインパクト版: 「みんな死んでたけど魔法で生き返りました」
- 半身版: 「実は死体は魔法で作った人形でした」
なんだか、どっちもどっちのような気が……。ディープインパクト版で既に一度、壮絶な血の海とクラスメイトたちの確かな死を見ているので、「実は作り物でした」と言われると余計にハァ?と思うのかもしれません。
メインルートのDエンドかUエンドを見ると、「おまけ」でシナリオマップを使用できるようになります。全てのシーンが細かく一覧になっており、各場面へ直行できるので便利。未見のシーンもシナリオマップで見れるようになっています。これは嬉しい機能ですね。ただ、あのシーンやこのシーンをあれこれ見たいのに、ゲーム場面→タイトルに戻る→おまけ→シナリオマップの流れを何度も繰り返すのは少々手間でした。シナリオマップから各場面へ飛んだ後、またすぐシナリオマップへ戻ったりもできるようにしていただけると嬉しかったかも。(追記:タイトル画面の右上の星からシナリオマップへ直行できるので、おまけ→シナリオマップの手間は省くことができます)
エロ日シナリオは敵の策略にまんまと嵌まってトータチスが落ちてしまうという内容ですので、どのシナリオもろくなことになりません。白石のエロ日シナリオは、いろいろな意味でビックリしました。学校で見る白石はごく普通の女の子で、そこまで壮絶な事情があるようには見えませんでしたけれども。あそこまで心が壊れているのに、学校であんなに普通にふるまえるものなのでしょうか。展開が唐突すぎて、ちょっと付いていけませんでした。エロゲーらしいシナリオですね、という程度の感想しか浮かんでこないのですが、実際
「エロ日シナリオ」なわけですので、これはこれで良いのでしょうか。
撤廃された桃子ルートと香澄ルートは、それぞれ完全版にて追加されるエロ日シナリオで補完されるようです。ただ、エロ絡みの短いシナリオ+バッドEDということで、あまり期待はできないかも。オタク趣味の香澄の家にサカナが居候して三太と三角関係を繰り広げるという香澄ルートを楽しみにしていたので、残念です。
【対象】18禁 【プレイ時間】8〜9時間 【ツール】NScripter 【頒布日】2005年12月30日 【備考】WEB体験版あり
【HP】「サカナ・ノベル」
http://www.sakananovel.com/